焚き火での調理をもっと手軽に、しかも自分だけの道具で楽しみたいと感じる人は多いはずです。自作の五徳ならサイズや形を自由に選べ、持ち運びやすさや耐久性も考えて作れます。ここでは短時間で作れるコツから材料選び、作り方、使い方までをやさしくまとめます。初めてでも扱いやすいポイントを押さえれば、安全に使えて料理の幅も広がります。
焚き火台の五徳を自作して短時間で使えるコツ
短時間で作れる基本設計
短時間で五徳を作るなら、構造をシンプルにすることがいちばん重要です。基本は鍋やフライパンを支える平らな面と脚の三点支持があれば十分で、複雑な可動部や細かな装飾は省きます。長方形や四角形のフレームに棒材を渡すだけの設計なら、切断と穴開けが少なくて済みます。
作業時間を短縮するには、加工の少ない板材や既製の金物を活用しましょう。例えば、厚めの鉄板や耐熱ステンレスのメッシュをフレームに固定するだけで強度が出ます。脚はネジ留めや差し込み式にして、現場で簡単に組み立てられるようにすると便利です。
持ち運び面も考えて、折りたたみ式や取り外し可能な脚にしておくと準備と撤収が早くなります。工具が少なくても組み立てできる構造にしておくと、現地での調整も短時間で済みます。
初めてでも扱いやすい素材の選び方
初心者には扱いやすい素材が向いています。薄すぎると変形しやすく、厚すぎると重くなります。鉄やステンレスの板材や角パイプは加工性と耐久性のバランスがよく、ホームセンターで手に入ります。特にステンレスは錆びにくく手入れが楽なので、外で使う道具には適しています。
アルミは軽くて持ち運びに有利ですが、耐熱性や強度で劣るため大型の鍋や高火力には不向きです。一方で鋳鉄は熱に強く調理に向きますが加工が難しく、重さもあるので中級者向けです。初めて作る場合は、厚さ2.0〜3.0mm程度の鉄板や角パイプを選ぶと安心です。
加工時の安全性も考慮して、刃物や火花が出にくい素材を選ぶと作業がスムーズになります。素材選びは用途と持ち運びの優先順位で決めるとよいでしょう。
調理が安定する形と高さの目安
調理の安定性を確保するには、三点支持の構造と鍋底がしっかり接する面積が必要です。直径の大きい鍋を使う場合は、より広い受け面を用意しましょう。受け面は格子状やバーを並べた形が熱を通しやすく、煙突効果で火力を活かせます。
高さは焚き火台との位置関係で決めますが、一般的に火床から15〜25cmが使いやすい目安です。低すぎると炎が直接鍋底に当たりすぎて焦げやすく、高すぎると熱が届かず効率が落ちます。高さを調整できる設計にしておくと、薪の量や調理内容に応じて最適化できます。
また、鍋が滑らないように受け面に小さな突起やリブを付けると安心です。重心が安定する配置を考えると、ふたをした調理や中身の重い鍋でも安心して使えます。
軽くて運びやすくする工夫
持ち運びを重視するなら、素材の軽量化と分解性がポイントです。脚や受け面を分割できるようにして、現地で差し込んで組み立てる方式にするとかさばりません。アルミ製のパーツや薄めのステンレス板を使えば軽量化できますが、強度とのバランスは必ず確認してください。
収納時の形状も考慮して、平らに折りたためる構造や袋に収まる寸法を目安に設計すると便利です。持ち手や収納袋を用意しておくと移動時の扱いが楽になります。
また、脚の長さを短くしてフレームを薄くすることで体積を減らせます。パーツごとに色分けや番号を振っておくと、設営が早くなりストレスが減ります。
安全に使うための簡単チェック
使う前には必ず外観チェックを行いましょう。割れ、変形、鋭利なバリがないかを確認し、ネジや接合部に緩みがないか点検します。特に焚き火の熱で金属疲労が起きやすい部分は念入りに見てください。
設置時は平らで安定した地面を選び、周囲に可燃物がないか確認します。五徳の脚が沈み込む恐れがある場所では、耐熱の板や石の上に置くと安全性が高まります。使用中は鍋やフライパンの位置がずれていないか時々確認し、揺れが出たらすぐ火力を落とすか再設置してください。
消耗が見られたら早めに交換や補修を行うことで事故を防げます。安全チェックを習慣化して使い続けることが大切です。
焚き火台で合う五徳の種類と選ぶ時のポイント
ロストル型の特徴と向く用途
ロストル型は細いバーや格子状の受け面が特徴で、火通りが良く燃焼効率が高いです。熱が均一に伝わりやすいため、直火でグリルやフライのような調理に向いています。薪の下に空気が通るスペースができるので、火力が安定しやすいのも利点です。
ただし、格子の間から小さな鍋や器具が落ちる可能性があるため、使用する調理器具の大きさに合わせて格子のピッチを選ぶ必要があります。重量物を載せるときはバーの太さや支持部の強度を見ておくと安心です。
屋外での直火調理やバーベキュー、焚き火台を活かした料理が多い場合には特に相性が良く、火力調整がしやすい点も評価できます。
三脚やスタンド型が向く場面
三脚やスタンド型は高さ調整がしやすく、鍋を吊るすタイプの調理に向いています。吊り下げ式にすると鍋の高さを簡単に変えられ、煮込み料理や湯沸かしに便利です。設置場所の地形に左右されにくく、脚を広げるだけで安定するのも利点です。
ただし、風にあおられると揺れやすい点や、足元の広さが必要な点には注意が必要です。重い鍋を載せる場合は三脚の材質と接合部を確認し、耐荷重に余裕があるか確かめてください。
キャンプ場での多用途調理や、複数人分の煮込み料理を作る場面で活躍します。
折りたたみ式のメリットと注意点
折りたたみ式は収納性と携行性に優れ、ソロキャンプやツーリングに向いています。現地で素早く組み立てられ、荷物の隙間に収まりやすいのがメリットです。金具の噛み合わせで寸法を調整できるタイプもあり、用途に合わせやすいです。
注意点としては、ヒンジ部やロック機構が疲労で緩んだり壊れたりしやすいことです。連結部の強度と耐熱性を確認し、定期的に点検することが大切です。軽さを追求するあまり耐荷重が不足している製品もあるので、実際の使用想定に合ったものを選んでください。
金属の種類ごとの耐熱性の違い
金属は種類によって耐熱性や重さ、耐食性が異なります。鉄(軟鋼)は熱に強く加工しやすい反面、錆びやすいので屋外使用では表面処理が必要です。ステンレス鋼は錆びにくく見た目もきれいですが、アルミに比べると重くなります。
アルミは軽量で携行性に優れますが、高温に長時間さらされると強度低下や変形が起きやすく、直火での高温調理には向きません。鋳鉄は熱保持に優れ、直火調理で安定しますが重さと取り扱いの難しさがあります。
用途と携行性、手入れの手間を考えて素材を選ぶのが良いでしょう。
調理器具との相性の見方
調理器具の形状や大きさに合わせて五徳を選ぶと調理がスムーズになります。底が平らなフライパンやスキレットは広い受け面が必要ですし、片手鍋やケトルは小さめの受け面でも安定します。底が凹んだダッチオーブンなどは吊り下げ式や深めの支持構造が合います。
調理器具の直径と五徳の支持幅を合わせ、鍋底がしっかり接するように確認してください。加熱効率や火力の伝わり方も器具ごとに変わるため、事前に試運転してみると安心です。
サイズと耐荷重の簡単な決め方
サイズは調理器具の直径に合わせて決めます。五徳の受け面は器具の底より一回り大きめにしておくと安心です。耐荷重は使用する鍋や食材の最大重量に2倍の余裕を見て設計するのがおすすめです。
例えば4kgのダッチオーブンを使うなら、少なくとも8kg以上に耐える構造にします。脚の太さや接合方法、素材の厚さが耐荷重に直結するので、シンプルな計算で余裕を持たせると安全です。
自作に必要な材料と道具の揃え方
ホームセンターで買える定番素材
ホームセンターでは鉄板、角パイプ、平鋼、ボルト・ナット、ステンレスメッシュなど五徳作りに必要な素材が揃います。鉄板は厚さ2mm〜3mmを目安に選ぶと丈夫です。角パイプや平鋼は脚やフレームに使いやすく、長さもカットサービスを利用すると作業が楽になります。
ボルトやナット、蝶ネジなどの留め具も多く揃っているので、現地で必要なサイズをそろえられます。耐熱塗料や耐熱グリースなどのメンテナンス用品も購入しておくと後々便利です。
工具類も揃っているので、必要なものが一度にそろいます。事前に買う物リストを作っておくと無駄がありません。
100均で代用できる部品の例
100均では耐熱性が求められる主構造に使うのは避けたほうがよいですが、収納用の袋や仕切り、耐熱手袋の補助、小さなフックやゴムバンドなどの補助部品は活用できます。シリコン製の鍋敷きや取り手カバーは低価格で入手可能です。
また、組み立て時のマーカーやメジャー、滑り止めシートなども100均で手軽に揃います。主要な金属部品はホームセンターで手に入れて、周辺アイテムを100均で補うとコストを抑えられます。
強度を保つための素材厚の目安
五徳の強度を保つには素材厚を適切に選ぶことが重要です。小型の五徳やソロ用なら板厚2.0mm、角パイプなら1.5mm以上が目安です。中型〜大型で重い鍋を使う場合は板厚3.0mm以上、角パイプや平鋼も厚みを増やしてください。
脚部は荷重が集中するため、薄すぎると曲がりやすくなります。脚と受け面の接合部は補強プレートやリベットで補っておくと耐久性が高まります。
過度に薄くすると短期間で変形するため、用途に合った余裕を持った厚み選びが肝心です。
加工に使う工具の最低ライン
最低限必要な工具は、金属カット用のノコギリまたはディスクグラインダー、穴あけ用ドリル、やすりやグラインダーでの面取り、レンチ類、ハンマーやゴム槌などです。材料のカットや穴あけが正確であるほど組み立てが楽になります。
電動工具が無い場合は手動の金属用ノコや金工ヤスリで対応できますが、時間と労力が増えます。安全用に保護メガネや耐熱手袋、マスクも準備してください。
錆を防ぐ処理や仕上げの方法
錆を防ぐには表面処理が有効です。鉄の場合は耐熱塗料を塗る、または高温で焼き付けて油を馴染ませる方法があります。ステンレスは基本的に錆びにくいですが、表面に汚れが付くと局所的に腐食が進むので清掃を心がけてください。
塗装する場合は高温に耐える製品を選び、塗装前には脱脂と下地処理を行うと長持ちします。使用後は乾燥させて保管することで錆を抑えられます。
手順に沿って作る五徳の作り方
寸法を測って設計図を用意する
まず使いたい鍋やフライパンの直径と重さを測り、それに合わせた受け面の寸法を決めます。受け面は鍋底より一回り大きめにし、脚の位置や高さも決めて簡単な設計図を描きます。寸法はミリ単位で正確に測るより、組み立て後の余裕を考えた余白を持たせると扱いやすいです。
紙に図を描いたら部品ごとの寸法リストを作成し、必要な材料を確認してから加工に進むと効率的です。
金属を切る安全なやり方と注意点
金属の切断は切粉や火花が飛ぶので、保護メガネや耐熱手袋、長袖を着用してください。ディスクグラインダーや金属用ノコを使う際は、しっかりとワークを万力などで固定し、無理な力をかけずに切断します。
切断後はバリ取りを行い、手を切らないように面取りをします。屋外で行うか換気の良い場所で作業し、周囲に可燃物がないかを確認して安全を確保してください。
パーツを組み合わせる組立のコツ
組み立ては仮組みをしながら進めるとズレを防げます。ボルト留めの場合は仮締めで位置を調整してから本締めを行い、溶接する場合は位置決めをクランプで固定してから行います。脚の取り付けは対角に少しずつ締めていくと歪みが出にくいです。
接合部にはワッシャーを入れて荷重が分散するようにすると強度が上がります。組み立て後に全体の歪みをチェックしておきましょう。
強度確認と荷重テストの方法
組み立て後は静荷重テストを行います。想定する調理器具の重さの1.5〜2倍の重りを載せ、十分に安定するか確認します。脚の沈みや接合部のたわみ、ボルトの緩みをチェックし、異常があれば補強します。
次に実際に弱火で火を入れて熱による変形や接合部の不具合が出ないか試します。安全確認が取れたら段階的に火力を上げて動作を確かめましょう。
仕上げと持ち運び用の収納アイデア
仕上げにはエッジの面取りと耐熱塗装、必要なら耐熱ワックスや油慣らしを行います。持ち運び用には専用の布袋や防錆効果のあるケースを用意すると便利です。パーツを分割して収納できる設計なら、収納時に梱包材で保護しておけば傷や錆を防げます。
持ち運び用のハンドルやストラップをつけておくと現地での扱いが楽になります。
使うときの安全対策と手入れの方法
設置場所と周囲の安全確認
五徳を設置する場所は平らで安定した地面を選び、風の影響を受けにくい場所が望ましいです。周囲に枯れ草や可燃物がないか確認し、近くに子どもやペットがいない状態で使用してください。焚き火台の下には耐熱板や石を敷くと地面へのダメージを防げます。
設置後は五徳と焚き火台の位置関係を確認し、脚が沈み込まないか念入りにチェックしてください。
火力調整で鍋の安定を保つ方法
火力が強すぎると鍋底が変形したり中身が吹きこぼれたりします。薪の量や配置で火力を調整し、必要なら灰や小石で熱量を緩和します。高さ調整機能がある場合は、鍋を高めにして弱火に近い状態でじっくり加熱する方法が有効です。
煮込みや長時間調理する際は、火を小さくして鍋の位置を安定させ、定期的に鍋の位置と火力を確認してください。
使い終わりの冷却と掃除手順
使用後は五徳が完全に冷えるまで触らないでください。冷めたら灰や煤をブラシで落とし、油汚れは薄めの中性洗剤とスポンジで洗います。鉄製の場合は水気を拭き取り、薄く油を塗って錆を防ぎます。
ステンレス製は汚れを落とした後、乾燥させて保管します。金属の表面に焦げ付きが残る場合は、重曹やクレンザーで落とすと比較的簡単にきれいになります。
点検すべき破損や変形の箇所
毎回の使用後に脚の曲がり、受け面のひずみ、溶接部やボルトの緩み、亀裂や割れがないか確認してください。耐荷重に近い使用を続けると金属疲労が起こりやすいので、目視でのチェックを欠かさないことが重要です。
変形や亀裂が見つかったら、使用を中止して補修や部品交換を行ってください。
長持ちさせる保管とメンテナンス
長期保管する際は、湿気の少ない場所に入れて錆を防ぐために薄く油を塗っておくとよいです。パーツごとに分解して保管すると湿気やかすり傷を防げます。使用前には必ず状態確認を行い、必要に応じてネジの増し締めや塗装の補修を行ってください。
定期的に手入れをすることで、安全に長く使い続けられます。
自作した五徳で焚き火を手軽に楽しもう
自作の五徳は、自分の使い方に合わせて調整できる点が魅力です。シンプルな設計と適切な素材選び、丁寧な点検を心がければ、安全に焚き火調理を楽しめます。まずは小さめのサイズで作ってみて、使いながら改良を加えていくと扱いやすくなります。
道具が自分に馴染むと、焚き火の時間がより豊かになります。安全と手入れを大切にして、ゆったりとしたアウトドアの時間を楽しんでください。

