秋から冬にかけてのアウトドアで、焚き火を囲みながら食べる焼き芋は格別の美味しさです。しかし、いざ自分で作ってみると「中がまだ硬かった」「外側が真っ黒に焦げてしまった」という失敗も少なくありません。実は、ちょっとした下ごしらえと火の通し方のコツを知るだけで、初心者の方でも石焼き芋屋さんのような、ねっとり甘い黄金色の焼き芋を作ることができます。
焚き火で焼き芋を作る作り方|初心者でも甘く仕上がる手順
焚き火で焼き芋を成功させる秘訣は、強い炎で一気に焼くのではなく、じっくりと時間をかけて熱を通すことにあります。素材の選び方から、火の勢いが落ち着いた「熾火(おきび)」の活用、そして水分を逃がさない包み方まで、一連の流れを正しく理解することが大切です。ここでは、誰でも失敗なく甘い焼き芋を完成させるための具体的な手順をステップごとに詳しく解説します。
さつまいもの下ごしらえと太さ選び
美味しい焼き芋作りは、スーパーや直売所でのさつまいも選びから始まっています。まず、品種に注目してみましょう。最近のトレンドは、ねっとりとした甘みが特徴の「べにはるか」や「安納芋」、あるいはしっとり滑らかな「シルクスイート」です。これらは加熱することで糖度が上がりやすく、キャンプでの焼き芋には最適です。昔ながらのホクホクした食感が好みであれば「紅あずま」も良い選択になります。
選ぶ際のポイントは、太さが均一で、極端に太すぎないものを選ぶことです。あまりに太い芋を選んでしまうと、中心部まで熱が通る前に外側が焦げてしまう可能性が高くなります。目安としては、大人の手首より一回り細いくらいの、中サイズが最も扱いやすく失敗が少ないです。
下ごしらえでは、まず皮を傷つけないように優しく水洗いをし、泥をしっかり落とします。皮ごと食べるのが焼き芋の醍醐味ですので、丁寧に洗いましょう。水洗いした後の水分は、この後の「蒸し焼き」の工程で重要になるため、完全に拭き取る必要はありません。また、両端の細い部分は焦げやすいため、あらかじめ少し切り落としておくと、全体が均一に焼き上がります。
熾火づくりと置き場所の基本
焚き火で最もやってはいけないのが、勢いよく燃え上がっている「炎」の中に直接さつまいもを投入することです。炎の温度は非常に高く、表面だけがすぐに真っ黒に焦げてしまい、中は生のままという状態になってしまいます。理想的なのは、薪が燃え尽きて赤く光っている「熾火(おきび)」の状態です。熾火は遠赤外線を放出し、食材の中までじっくりと熱を届けてくれます。
熾火ができたら、焚き火台の隅にスペースを作ります。火力が一番強い中心部ではなく、端の方に置くのがポイントです。熾火を集めた横に置くか、少量の熾火を上に被せる程度にしましょう。地面に直接置くのではなく、焚き火台のロストルの上や、後述する網の上を利用すると、空気の通り道が確保されて安定した熱を伝えることができます。
置き場所を決めたら、そのまま放置するのではなく、時々位置を調整してあげることが大切です。キャンプ場の風向きや熾火の量によって熱の伝わり方は常に変化します。こまめに様子を見ながら、優しく転がすように配置を変えていくことで、ムラのない完璧な焼き芋に近づきます。
アルミホイルの包み方と二重巻きのコツ
焼き芋を「焼く」のではなく「蒸し焼き」にするために、包み方には一工夫が必要です。水洗いしたさつまいもを、そのままアルミホイルで包むのではなく、まずは濡らした新聞紙やキッチンペーパーで包んでください。この湿った紙の層が、加熱中に適度な蒸気を発生させ、芋が乾燥するのを防ぎながら、しっとりと柔らかく仕上げてくれます。
紙で包んだ上から、アルミホイルを隙間なく巻いていきます。ここで大切なのが「二重巻き」にすることです。アルミホイルを1枚だけだと、熾火の熱が直接当たりすぎて紙が焦げたり、ホイルが破れたりすることがあります。二周ほどしっかりと巻き、端をギュッと絞って密閉することで、中の水分を逃がさず、熱を効率的に閉じ込めることができます。
もし、さらにこだわりたい場合は、市販されている「焼き芋専用の黒いアルミホイル」を使用するのもおすすめです。黒い色は熱を吸収しやすいため、通常のシルバーのホイルよりも早く、そして甘く焼き上げることができます。包む際は、空気が入らないようにぴっちりと密着させることを意識してください。この密着度が高いほど、熱伝導がスムーズになり、美味しい焼き芋へと仕上がります。
焼き時間の目安と火力別の見極め
焼き時間は、熾火の強さやさつまいもの太さにもよりますが、おおよそ40分から60分程度を目安にしてください。20分ほど経ったところで一度上下をひっくり返し、熱が均等に当たるように調整します。早く食べたい気持ちを抑えて、じっくり待つのが甘みを引き出す最大のコツです。
焼き上がりの見極めは、アルミホイルの上から竹串や割り箸を刺してみるのが一番確実です。抵抗なくスッと中心まで通れば完成の合図です。もし「少し硬いかな」と感じたら、無理に火から上げず、あと10分ほど追加で加熱してください。軍手越しに優しく握ってみて、中まで柔らかくなっている感覚を確認するのも一つの方法です。
火力が強すぎてホイルから香ばしい匂い(あるいは焦げた匂い)がしてきたら、すぐに火力の弱い場所へ移動させましょう。逆に、1時間経っても硬い場合は、熾火の量が足りないか、芋との距離が遠すぎることが考えられます。周囲に熾火を寄せ集めて、熱源を強化してください。完成した焼き芋は、火から下ろした後にホイルに包んだまま5分ほど余熱で放置すると、さらに甘みが全体に回って美味しくなります。
焚き火の焼き芋がラクになるおすすめ道具7選
焚き火で焼き芋を作る際、専用の道具や便利なキャンプギアを使うことで、作業のしやすさと仕上がりの質が格段に向上します。熱を効率よく伝えるホイルから、安全に作業するためのグローブ、火力を安定させる焚き火台まで、実際に役立つアイテムをまとめました。
東洋アルミ 石焼きいも黒ホイル
通常のアルミホイルとの最大の違いは、外側が黒く加工されている点です。黒は熱を吸収しやすいため、短時間で芋の内部まで熱が通り、甘みを引き出す「ベータアミラーゼ」の働きを活性化させます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | 石焼きいも黒ホイル |
| サイズ | 幅25cm×長さ3m(一般的なモデル) |
| 特徴 | 熱吸収率が高く、時短で甘い焼き芋が作れる |
| 公式サイト | 東洋アルミエコープロダクツ |
焼き芋鍋 新いも太郎(タキイ種苗)
焚き火の上に直接置いて使用できる、鋳鉄製やセラミック製の専用鍋です。石焼き芋のような遠赤外線効果が得られ、灰で汚れにくいのもメリットです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | 焼き芋鍋 新いも太郎 |
| 素材 | 鋳鉄製(本体) |
| 特徴 | 空焚き調理が可能で、本格的な石焼き風が楽しめる |
| 公式サイト | タキイネット通販(販売元確認) |
キャプテンスタッグ ダッチオーブン
万能調理器具であるダッチオーブンは、焼き芋作りにも最適です。厚手の鉄鍋が熱を均一に伝え、圧力効果で中までしっとりと焼き上げます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | ダッチオーブン セット(25cm) |
| 素材 | 鋳鉄 |
| 特徴 | 蓋の上に炭を置くことで上下から加熱できる |
| 公式サイト | キャプテンスタッグ公式サイト |
スノーピーク 焚火台(S/M/L)
頑丈なステンレス製の焚き火台です。安定した熾火を作りやすく、サイズ展開も豊富なので、焼きたい芋の量に合わせて選ぶことができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | 焚火台 L |
| 素材 | ステンレス |
| 特徴 | 優れた耐久性と、効率的な燃焼を促すデザイン |
| 公式サイト | スノーピーク公式サイト |
スノーピーク 焚火台グリルブリッジ+焼アミ
焚き火台の上に設置することで、火との距離を調節できる便利なオプションパーツです。網の上に芋を置くことで、焦げ付きを防ぎながら安定した調理が可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | 焚火台 グリルブリッジ L |
| 素材 | ステンレス |
| 特徴 | 3段階の高さ調節が可能で火力をコントロールしやすい |
| 公式サイト | スノーピーク公式サイト |
ユニフレーム ファイアグリル+焼網
コストパフォーマンスに優れ、キャンプ初心者にも人気の焚き火台です。付属の網を斜めに置くことで、隅に保温スペースや弱火スペースを作りやすい設計です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | ファイアグリル |
| 素材 | ステンレス鋼(本体) |
| 特徴 | 耐荷重性能が高く、重いダッチオーブンも置ける |
| 公式サイト | ユニフレーム公式サイト |
スノーピーク ファイヤーサイドグローブ ブラウン(UG-023BR)
熱いアルミホイルや薪を扱う際の必須アイテムです。厚手のレザー素材が手を熱から守り、焼き上がりの確認も安全に行うことができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | ファイヤーサイドグローブ ブラウン |
| 素材 | アウターグローブ:牛革、インナーグローブ:ポリエステル・コットン |
| 特徴 | 着脱可能なインナー付きで清潔に保てる |
| 公式サイト | スノーピーク公式サイト |
もっとおいしく仕上げるコツとよくある失敗対策
基本の手順をマスターしたら、次はさらにクオリティを高めるためのテクニックを意識してみましょう。焼き芋の甘みは科学的な反応によって生まれます。また、現場でよく起こる「焦げ」や「生焼け」といったトラブルへの対処法を知っておくことで、どんな環境でも安定して美味しい焼き芋を提供できるようになります。ここでは、ワンランク上の仕上がりを目指すためのポイントを解説します。
甘さを出す温度帯と弱火キープ
さつまいもが甘くなるのは、芋に含まれる澱粉(でんぷん)が「ベータアミラーゼ」という酵素によって麦芽糖に変わるからです。この酵素が最も活発に働くのが、芋の内部温度が60度から70度の間と言われています。つまり、この温度帯をいかに長く維持できるかが、甘さを引き出す最大の鍵となります。
焚き火でガンガン強火を当ててしまうと、この重要な温度帯を一瞬で通り過ぎてしまい、澱粉が糖に変わる時間がなくなってしまいます。そのため、火力が落ち着いた熾火を使い、さらに灰を少し被せるなどして「弱火」の状態を長くキープするようにしてください。急がば回れの精神で、じっくり低温で加熱し続けることが、蜜が溢れるような甘い焼き芋を作るコツです。
キャンプサイトで温度計を使うのは大変ですが、アルミホイルを触ったときに「アチッ」と一瞬で手を離すほどではなく、じわじわと熱さが伝わってくるくらいの距離感を保つのが理想的です。
焦げを防ぐ配置と途中で回すタイミング
「外側は真っ黒なのに中はまだ硬い」という失敗の多くは、熱源との距離が近すぎることと、放置しすぎることが原因です。焚き火台の上では、場所によって熱の強さが大きく異なります。直接熾火の上に置くのではなく、熾火の「隣」に配置することを意識してください。
また、同じ向きでずっと置いていると、接している面だけが過熱されて焦げてしまいます。15分から20分に一度は、トングを使って芋を90度ずつ回してあげましょう。全体に万遍なく熱を当てることで、皮も焦げすぎず、香ばしい風味だけを残すことができます。
もし、どうしても火力が安定しない場合は、厚手のアルミホイルをさらに1枚追加して巻くか、焚き火台の隅の灰が溜まっている場所に埋めてしまうのも手です。灰には断熱・保温効果があるため、直火よりもさらに柔らかい熱を芋に伝えてくれます。
生焼けを避ける確認方法と追い焼き
竹串を刺して確認した際、表面はスッと入るのに中心部でググッと抵抗を感じる場合は生焼けです。そのまま食べてしまうと、さつまいも特有の風味が楽しめないだけでなく、お腹を壊す原因にもなりかねません。生焼けに気づいたら、すぐにホイルを巻き直して「追い焼き」を行いましょう。
生焼けの原因は、焼き時間が足りないか、周囲の温度が低すぎることのどちらかです。追い焼きをする際は、少しだけ熾火を芋の近くに寄せて熱を強化します。このとき、焦げないようにこれまで以上にこまめに回転させることを忘れないでください。
また、一度火から下ろして冷めてしまった後に再加熱するのは時間がかかります。焼き上がりの確認は、必ず「まだ火が活きている間」に行うのが鉄則です。少しでも不安を感じたら、あと10分追加で焼くくらいの余裕を持つことが、最終的な満足度に繋がります。
皮が硬い・水っぽいときの原因整理
焼き上がった芋の皮が厚くて硬くなってしまうのは、水分の蒸発が進みすぎている証拠です。これは、アルミホイルの巻き方が甘かったり、新聞紙を濡らす水分が足りなかったりしたときに起こります。密閉性を高め、しっかりと蒸らし効果を効かせるように改善してみましょう。
逆に、中が水っぽくなってしまう場合は、火力が弱すぎたか、保存状態の悪い芋を使用していた可能性があります。あるいは、濡らした紙の水分が多すぎて、蒸し焼きというよりは「茹でた」ような状態になっていることも考えられます。紙は「滴らない程度」に湿らせるのが正解です。
また、芋の種類による違いも理解しておきましょう。「安納芋」などはもともと水分量が多く、ねっとりした仕上がりになるのが正常です。自分の好みの食感に合わせて、品種選びと水分の調整を組み合わせていくことが、自分史上最高の焼き芋への近道です。
焚き火焼き芋は「熾火・包み方・時間」で仕上がりが決まる
焚き火で作る焼き芋の成功は、「適切な熱源(熾火)」を選び、「水分を守る包み方」を施し、「じっくりと時間をかける」という3つの要素を揃えることで決まります。難しい技術は必要ありません。ただ、自然の火の力を信じて、焦らず丁寧に扱うことが大切です。
キャンプの夜、パチパチと薪がはぜる音を聞きながら、ホイルに包まれた芋の様子をうかがう時間は、それ自体が豊かなアウトドアの楽しみです。そして、完成したホカホカの焼き芋を割った瞬間に立ち上る湯気と甘い香りは、手間をかけた分だけの感動を届けてくれます。
今回ご紹介した道具やコツを取り入れて、ぜひ次回のキャンプで実践してみてください。家族や友人と一緒に、最高に甘い「黄金色の焼き芋」を囲みながら、心温まるひとときを過ごしましょう。

